大判例

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広島高等裁判所 昭和31年(う)385号 判決

一、A弁護人の論旨第一、二点及びB弁護人の論旨一について

論旨は要するに、本件は景品付又は賞品付の万年筆の売買であつて賭博罪を構成するものではない。しかるに原判決がこれを賭博罪として認定処断したのはその間事実誤認、理由不備、法令適用の誤等の違法があるというに帰する。よつて記録並びに原審の取調べた証拠を検討するに、被告人の行つた方法はなるほど所論のように万年筆一本を代金千円で販売しこれを購入して右代金を支払つた者に対しては煙草ピース十本入の空箱三個から成るくじ(たばこくじ)を引かせその結果当りくじを引き当てた場合は賞品として腕時計一個又は現金三千円を提供し(万年筆一本二千円の場合の賞品は腕時計二個又は現金六千円)当らなかつた場合は残念賞として時価五十円位のボールペン一本を交付するというのであつて、くじを引くことも、くじを引き当てた場合に提供する前記賞金又は残念賞もあたかも被告人が万年筆を買つて貰つた景品であるかのような外観を呈するのであるが、平田明義の検察官に対する供述調書によると、右万年筆の一本千円の分はその卸価格は二四〇円小売価格は四〇〇円位、一本二千円の分は卸価格三〇〇円小売価格は五〇〇円位の安価なものであることが認められ、且つ有地盛治の検察官に対する供述調書中「私は最初万年筆は十四金だということと「たばこくじ」があるというので千円で万年筆を買つたが万年筆だけなら買う気はなく「たばこくじ」があるのでそれを当てようという欲心から買つてみたのであり特に二本目からは何とかくじを引き当てて最初に出した金を取り戻したい一心から続けて二回三回四回と金を出したのであつて、このように四本も万年筆を買つたのは万年筆を買わなければくじが引けないので買うことにしただけで全く金を賭けてくじを引くことだけが目的であつた」旨の記載等に徴するときは、被告人が売買名義で交付する万年筆は一本千円又は二千円などという価格で真実売買することを目的とするものではなく、万年筆の売買は単に表面を仮装するに過ぎないものであつて、その実は巧妙な方法で前記たばこくじを引かせるために出金(売買代金名下に賭金)をさせ賞品又は賞金の得喪を目的とするものであることを容易に知ることができる。従つて所論のように売買に附随する景品というのとは全くその性質を異にし、前記「たばこくじ」に当るか否かの偶然な勝敗に関し金銭を賭するものに外ならないものであるから賭博にあたることは明らかである。

原判決の判示はやや正確を欠く嫌がないでもないけれどもその判示するところは結局右の趣旨に外ならないことがわかる。従つて原判決には所論のような事実誤認、理由不備、法令適用の誤等の違法はない。論旨はいずれも理由がない。

(裁判長判事 柴原八一 判事 尾坂貞治 判事 池田章)

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